昴(すばる)
作詞・作曲・唄:谷村新司

<1>
目を閉じて 何も見えず
哀しくて 目を開ければ
荒野(こうや)に 向かう道より
ほかに 見えるものはなし
  嗚呼(ああ)砕け散る
  運命(さだめ)の星たちよ
    せめて密(ひそ)やかに
    この身を照らせよ
 
  我は行く 蒼白き頬のままで
  我は行く さらば昴よ

    <2
呼吸(いき)をすれば 胸の中
凩(こがらし)は 吠(な)き続ける
されど 我が胸は熱く
夢を 追い続けるなり
  嗚呼 さんざめく 
  名も無き星たちよ
    せめて鮮やかに 
    その身を終われよ
 
  我も行く 心の命ずるままに
  我も行く さらば昴よ

    Mmmm……(ハミング)

嗚呼 いつの日か 誰かがこの道を
嗚呼 いつの日か 誰かがこの道を
  我は行く 蒼白き頬のままで
  我は行く さらば昴よ
  我は行く さらば昴よ

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〔蛇足〕谷村新司は1948年大阪市の生まれ。桃山学院大学に7年間在籍したのち中退。
1971年に堀内孝雄と「アリス」を結成しました。翌年、これに矢沢透が加わります。
「アリス」は『冬の稲妻』『チャンピオン』など多くのヒットを飛ばしましたが、人気絶頂期の
1980年、谷村はソロ活動を開始しました。「ナンバーワンよりオンリーワンになりたい」との
気持ちからだったといいます。その最初のヒット曲で、彼の代表作となったのが『昴』です。
翌81年、「アリス」は活動を停止し、ほかの2人もソロに転じました。

『昴』は、歌詞の雄大なイメージと歌いやすいメロディのため、国内のみならず、東アジア各国の
人びとにも愛唱されました。 「蒼白い頬」と「息をすれば吠き続ける胸の“凩”」というと、
この青年は、もしかしたら肺結核にかかっているのかもしれません。だとすると、微熱に悩まされ
ながらも、何か遙かなるものへの憧憬に衝き動かされて荒野をさまよう青年、といったイメージが
浮かんできます。そういえば、五木寛之の小説『青年は荒野をめざす』がベストセラーになったのは、
1960年代末のことでした。

なお、昴はプレヤデス星団の和名です(上の写真)。プレヤデス星団は、おうし座にある数百個の
星々が集まった散開星団で、6個の明るい星は>肉眼でも見ることができます。清少納言の『枕草子』に
「星はすばる……」と書かれていることは、よく知られています。江戸時代の国文学者、狩谷鍵斎・
平直方などの研究によって、すばる」は「統(す) べる」が転訛したもので、6つの星が糸で統べた
ように集まった状態を表したもの、とするのが定説になっています。「統べる」には「統治する、
統率する」という意味もあることから、よく「王者の星」と呼ばれます。

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