札幌市制100年 政令市移行50年 拡大続け全国第4の市に発展
R4/2022/01/01 10:30
新幹線の札幌駅予定地
札幌市は今年、市制施行100年、政令指定都市移行50年の二つの節目を迎える。1869年(明治2年)に
開拓使が置かれてからほぼ半世紀後の市制施行を契機に、戦時を挟みながら、札幌の近代化、都市化、国際化は進
んだ。2008年には人口190万人を突破。人口規模で全国4番目の市に発展し、飛躍の1世紀を歩んできた。
1922年(大正11年)8月1日、札幌は函館、小樽、旭川など他の道内5市と同時に市となった。この時の人
口は12万7044人。79年発行の「さっぽろ文庫第7巻『札幌事始』」(札幌市教委編)は当時の市民の様子
を「夜は提灯(ちょうちん)行列が延々とつづいて、さながら市内は不夜城と化し(中略)市中は歓喜の一色に塗
りつぶされた」と伝える。
翌23年(同12年)には旧都市計画法が適用され、条丁目を基盤にした中心部の市街化が進展した。昭和に入る
と、27年(昭和2年)の市電(路面電車)、30年(同5年)の市営バス(2004年廃止)運行開始など交通
網が発達。上下水道の整備が本格化し、37年(同12年)の旧市役所庁舎の完成など近代化が進んだ。
戦時を挟み、人口は急増する。40年(同15年)の国勢調査で人口20万人を超え、函館を抜き道内一に。戦後
は白石村や琴似町など自治体合併により市域が拡大した。北24条周辺にサハリン(樺太)などからの引き揚げ者
が住宅街を形成。50年代以降は道内の炭鉱閉山による元炭鉱労働者らの流入が続き、60年、人口は50万人を
数えた。
「人口増により、開発の中心はそれまでの大通地区周辺から札幌駅以北に広がった。それが市域全体の都市化につ
ながったんです」。札幌の歴史に詳しいタウン誌編集者の和田哲さん(49)は指摘する。
まちの形を決定づける動きは70年代に大きな節目を迎えた。その中心はやはり72年2月の札幌冬季五輪だ。ア
ジア初の冬の五輪として開催が決まったのは66年。人口増に伴い大量の輸送力が必要になったことと相まって地
下鉄や地下街整備の議論が一気に加速した。
71年11月、地下街オーロラタウン・ポールタウンが完成。同12月、市営地下鉄南北線(北24条―真駒内)
が運行を始めた。札幌を象徴する雪まつり開催やテレビ塔完成、もいわ山ロープウェイ開業などは50年代の出来
事だが、そこから五輪までに都市は膨張、70年に人口100万人を超えた。
和田さんは「五輪開催で市民は『世界に冠たる都市・札幌の住民』と自信を持った。そしてそれが、その後の市民
意識の高まりや、まちの一体感の醸成にもつながった」とみる。
政令市移行は五輪後の72年4月1日だ。国内では川崎、福岡の両市と同時で東京以北では当時、初の政令市誕生。
中央、北、東、白石、豊平、南、西の7区体制でスタートした。
それからさらに半世紀。地下鉄延伸やYOSAKOIソーラン祭り開催、JR札幌駅南口広場誕生、札幌ドーム開業
、駅前通地下歩行空間(チカホ)完成、市電ループ化…。札幌のまちの特徴は現在まで少しずつ深化し、迎えた20
22年、次の1世紀へ向けた新たな一歩を踏み出す。
■北海道新幹線の延伸見据え再開発 市中心部
市制施行からの100年で道内の政治、経済、文化の中心として道都の地位を確立した札幌市。2020年10月国
勢調査の市人口は、前回比1・1%増の197万3395人となり道内人口の約4割を占める。その足元で今、JR
札幌駅前や大通地区など市中心部の大規模再開発が進む。
再開発の各事業が見据えるのは、30年度末開業予定の北海道新幹線札幌延伸だ。新幹線駅と直結する中央区北5西
1・西2街区では、ホテルやオフィスが入る高さ約250メートルの高層ビルと商業施設、バスターミナルを整備す
る予定で、市などは29年秋開業を目指す。
近接する札幌西武跡地を含む同区北4西3街区でも、高さ約200メートルの高層棟と約60メートルの低層棟にホ
テルや商業テナントなどが入る複合ビルの建設が予定され、市中心部では大小10件前後の事業が進行している。
これらの計画に合わせて、開発局は市中心部と札樽自動車道を結ぶ国道5号(創成川通)を地下トンネル化する「都
心アクセス道路」の整備に着手。市は創成川東部地区などと新幹線駅を結ぶ自動運転の水素バスの導入なども検討し
ており、市幹部は「10年後の札幌は街並みだけでなく、交通利便性も格段に進化する」と夢を膨らませる。
一方、人口の増加傾向は今後鈍化するとみられている。市は少子高齢化の進展で、市内の人口は40年に183万人
、60年には155万人にまで減少すると推計。65歳以上の高齢化率は40年に4割に上るとみる。
招致を目指す30年冬季五輪・パラリンピックを含め、市は今後の約10年を「まちのリニューアル」「まちの成熟
」に向けた期間と捉えるが、「60~70年代の開発はあまり事後検証されてこなかった」(タウン誌編集者の和田
哲さん)との指摘もある。
道都のこれまでをどう振り返り、これからをどう展望するか。次の100年のスタートにはそんな課題も横たわる。
(平岡伸志)
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